生酛(きもと)

 いよいよ本日、生酛を立てます。酒蔵・加越では初めての試みなんですよ。そのために蔵人の奥田君は姫路の田中酒造へ勉強しにいきました。(詳しくは、蔵人のひとりごと http://archive.mag2.com/0000155257/20120201190000000.html から読んでみてくださいね)

 いままで何度も報告しました酒母(酛:もと)には、大きく分けて速醸酛(そくじょうもと)と生酛(きもと)に分けられます。酵母菌は乳酸酸性下では発育・繁殖することができるのですが、酵母以外の菌はなかなか発育できません。その乳酸を乳酸菌によって産出させるのが生酛(きもと)で、乳酸を人工的に添加するのが速醸酛(そくじょうもと)です。一般的に、生酛(きもと)のほうが味の濃いお酒に仕上がり、速醸酛(そくじょうもと)はキレイで淡麗な味わいになります。速醸酛には、普通速醸酛や高温糖化酛などがあります。
 また、生酛は、酛を立ててから平たい半切(はんぎり)と呼ばれる平たい桶にくみ出し、蔵人たちが一定時間おきに櫂棒ですりつぶします。この作業のことを山卸(やまおろし)というのですが、これは重労働の上、作業時間が夜中であったりするため、この山卸の作業を廃止したものが山廃酛(やまはいもと)と呼ばれるものです。もちろん、これを廃止したからといって酒がまずくなるということはなく、速醸酛・生酛を含めその造り方には細かな神経を使うため、それぞれに特徴のある美味しいお酒が造られています。

 今回は、その山卸を行う生酛(きもと)を立てました。
 午前9時に蒸しあがったお米は、布に包み放置します。これを埋け飯(いけめし)といいます。約2時間暖かいままにしておくのですが、これは急に蒸し米を冷ますより柔らかくして蒸し米を融けやすくするためです。もっとも、これは精米歩合が低かった時代、米を今ほど磨かなかった時代のなごりであって、高精白米を使う今の時代は必要ないと言われる方もいらっしゃいます。でも、酒蔵・加越では、昔ながらの製法で行ってみました。




 

その後、送風機で風を送りながら蒸し米を冷ましました。
確かに、冷気で急冷した蒸し米より柔らかな蒸し米です。櫂ですれば融けやすそうですね。
動画をどうぞ→ http://youtu.be/SHpXnjWi018



さて、酛場ではすでに半切に水と麹を入れて蒸し米の投入を待っています。これは今朝の午前5時ころから用意してあったものです。この中に蒸し米を投入します。





蒸し米の投入です。
動画をどうぞ→ http://youtu.be/Gfyuw2FLJYI





蒸し米投入後、蔵人の奥田君が素手でかき混ぜます。蒸し米をほぐすように。






今回は、2枚の半切を使って仕込みました。仕込後、3〜4時間おきにこのように手でかき混ぜます。夜中にもなりますから大変な仕事です。蔵人の奥田君は大変です。
動画をどうぞ→ http://youtu.be/XC3N-lI20eE

 明日の朝まではこのように手でかき混ぜますが、明日の午前5時よりは櫂棒を使って山卸(酛すり)を行います。越後の「酛すり唄」を歌いながらやってみたいです。